家出艦長の里帰り
ARIEL番外編2 家出艦長の里帰り (ソノラマ文庫) | |
笹本祐一/ささもとゆういち イラスト:鈴木雅久 | |
ソノラマ文庫/朝日ソノラマ(2006/2) | |
慣熟訓練を兼ねてソノート星系へと向かった新戦艦ルキフェラスは、第三惑星アルビオロンの錨泊空域に到着した。死んでも帰りたくなかった故郷が眼前にある。ほとんど喪神状態のハウザーは、ダイアナの冷徹な圧力と、嬉しさを隠しきれないシモーヌの誘導で、アルビオロン城へと向かった。だが、到着前に届いたのは、母エレノアが倒れたとの知らせだった。うろたえるハウザーに姉ダイアナは命じた。「結婚しなさい。それがお母様の何よりの特効薬よ」――人気シリーズ後日譚・第二弾。 (裏表紙より) |
この2人、本編第6巻でハウザーが結婚式場にのりこみ、花嫁のシモーヌを強奪する、なんてことまでしたのに、その後の進展はさっぱりなまま本編は完結。この番外編で、一気に結婚までこぎつけることができて、めでたしめでたしである。それにしても「機動要塞 結婚式場 銀英殿」って...(笑)
前半の里帰りから結婚が決まるまでの、お姉さま方に頭が上がらないハウザーの悪あがきや狼狽ぶりは、いつもどおり笑える。母エレノアも出番は少ないものの、さすが、あの姉妹の母親だけあって、なかなかのキャラのよう。都合が悪くなると逃げ出す父ゲルハルトの気持ちも分かるような気がする。
シモーヌの両親に挨拶するために出かけたジレル星系で、星泥棒相手に戦う後半は、敵がちょっと物足りない。星系まるごと売り飛ばす星泥棒、スター・クラッシュは、スケールは大きいが、実際にやっていることは地味であまりおもしろくなさそう。海賊が強引に星を乗っ取るのとは違って、売買契約や綿密な計画に基づいたビジネスだから当たり前か。今回はタイミング(と相手)が悪くて失敗したが、かなり実戦慣れした戦力と豊富な資金を持った大規模な組織が背後にあると予想される。今後、敵として登場するのだろうか。敵役に不足のない相手であることを期待したい。
それにしても、旧式戦艦のオルクスで低予算でやりくりしていたときならともかく、最新鋭のルキフェラスではまともな戦闘になりそうなものだが、あいかわらずムチャしてるのは、このシリーズらしい。休暇中で人手が足りないからって、艦長、参謀副官に経理部長まで降下兵で出撃するとはねぇ。
さて、結婚の最大の難関のはずのシモーヌの父親だが、あっさり許してくれて拍子抜け。そりゃかわいい娘の望みだし、星泥棒を追っ払うオマケつきで、あまりゴチャゴチャいってもしかたないだろうけど、もうちょっと艦長にいじわるして遊んで欲しかった(笑)
2006/3/16記