侵略会社の新戦艦
ARIEL番外編(1) 侵略会社の新戦艦 (ソノラマ文庫) | |
笹本祐一/ささもとゆういち イラスト:鈴木雅久 | |
ソノラマ文庫/朝日ソノラマ(2005/2) | |
地球での侵略業務を成功裡に終えたハウザーは、核恒星系に帰還した。凱旋のはずなのに、その顔色は冴えない。帰還先には、何よりも避けて通りたい恐ろしい姉、ダイアナが待ち構えているのだ。そして、目下のスポンサーでもあるその姉が弟に下した業務命令は、ポンコツとなった戦艦オルクスの代替艦探しと、死んでも帰りたくない実家に顔を出すことであった。
落ち込んで目もうつろなハウザーが手にしたその代替艦とは!? 苦難が続くハウザーの後日談、その1。
(裏表紙より) |
ARIEL番外編第1巻は、地球ではなく宇宙人側の話。だから、エリアルはまったく出てこないのだが、そういうのは本編でもあったし、地球側より制約が少ないぶん、おもしろい気がする。
さて、ようやく地球侵略を終えて核恒星系に戻ってきたオルクス。艦長ハウザーは、姉ダイアナに代艦の決定と里帰りを命じられる。2番目の命令に凍りついてしまったハウザーだが、なんとか立ち直って代艦を探しているところに、ダイアナがゲルニクス社の戦艦ルキフェラスのモニター話を持ちこんでくる。実はこの船、ダイアナがトマス・ゲルニカと賭けをしてまきあげた、最新鋭の豪華(^^;)電子戦艦だった。賭けの内容は「どちらが宇宙を征服するのにふさわしいか」。こんな賭けをするのも、それに勝つのもすごいが、あっさり負けを認めて、新型戦艦1隻くれちゃうのもどうかと思う....
結局、最後までダイアナの手のひらの上で転がされることに。ルキフェラスの試験航海の行き先は、里帰りも兼ねて(笑)艦長の実家があるアルビオロンだし、練習相手には父ゲルハルト率いる第三艦隊を用意(?)してるし。しかも、ルキフェラスが正体を隠して電子戦を成功させたのに、第三艦隊にタレこんで追いかけまわさせ、電子戦力以外のテストまでお膳立てするとはね。いやはや恐るべし、ダイ姉ちゃん。
ルキフェラスの売りは「銀河系の半分と戦争ができる」電子戦力なので、ハウザーのもう1人の姉シンシアも登場。なんと第三艦隊だけでは物足りず、統合参謀司令部にも攻撃をしかけ、ダウンさせてしまう....って、すごいことのはずなんだけど、描写が少なくてパッとしない。それよりも、その後の第三艦隊との対艦戦にページが多く割かれていて、おもしろかった。自慢の電子戦力を最低限しか使わずに、正規艦隊を引きずりまわし、最終的には相手の顔を立てて、まるくおさめてしまう。前半でお姉さま方に頭が上がらず、情けない姿をさらしていた艦長だが、実戦だけでなく政治的解決までやってのけて、面目躍如といったところか。
さて「ふさわしい」かどうかはともかく、宇宙征服なんて簡単にやってしまいそうなお姉さま方と、こき使われるであろう艦長の今後はどうなるのか、続編があることを期待したい。